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たかたまさひろ(著)

No.225『相手によって態度を変えない』

人付き合いの苦手な人が、人間関係に大きなストレスを感じてしまう理由は、「相手がどう出るかによって、自分の態度を決めている」からではないでしょうか。
この人は自分を認めてくれるだろうか。自分から好意を示して、もし拒絶されたら悔しい。認めてくれるなら仲よくしたいと思うが、拒絶されるくらいなら、こちらから先に拒絶してやる……。
そんなことをあれこれ考え、他人を試したり、警戒したりしているうちに、相手の一挙一動に振り回されているような気になって、心は疲れ切ってしまうのです。

「私を拒絶すると許さないぞ」と他人を威嚇しても、嫌われることを防ぐことはできません。それどころか、よけいに嫌われることになってしまうでしょう。
他人から嫌われないようにどれだけ気を遣い、へつらっても、そういう卑屈な態度こそが嫌われることもあります。
他人から嫌われることを怖れている人というのは、まるで蛇を怖れて藪をつついている人のようです。
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人付き合いのストレスや不安を減らす方法は、他人を敵か味方かで差別せず、誰でも分けへだてなく尊重することです。
相手がどういう態度に出ようが、自分は他人を責めたり見くだしたりしない。そう心に決めれば、いちいち他人の言動に一喜一憂して心を乱されることはありません。
自分を認めてくれる人だけを認めるのは、誰にでもできる簡単なことです。
「たとえ相手が自分を尊重してくれなくても、自分は相手を尊重する」ことができて、はじめて他人を尊重したといえるのです。

もちろん、相手との立場上の上下関係や、好きか嫌いかによって、話す内容や言葉遣いを変えるのは当然のことです。
しかし最低限、「相手をひとりの人間として尊重する」という態度だけは変えてはいけないのです。

何でも他人の言いなりになればよいというのではありません。嫌なことは嫌だとはっきり主張はすべきです。
他人の要求をはねつけるのはかまいませんが、ただし、相手の人格にまで踏み込んで攻撃してはいけません。
「こんなことをするあなたが嫌いだ」ではなく、「あなたのこういう行動が嫌いだ」という言い方をすべきなのです。

気の強い人を「頼もしい」と信頼する人もいますし、「威圧的だ」と敬遠する人もいます。
世話好きな人に対して、あるときは「親切だ」と感謝することもありますし、あるときは「出しゃばりだ」とうっとうしく感じることもあります。
自分が他人をどう思うかは自由ですが、それはあくまで現時点での自分ひとりの見方にすぎないということを忘れてはいけません。
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世の中に、「いい人」「悪い人」というのはいません。人それぞれに、いいところと悪いところがあるだけです。
自分の嫌いな人を思い浮かべてみてください。なぜその人と一緒にいると不快になるのでしょうか。
その人が、自分の劣等感を刺激するからではないでしょうか。認めたくない自分の心の奥底と向き合わされるからではないでしょうか。
嫌いな人とは、自分の弱さに気づかせてくれる人なのです。

他人を尊重できる人間になるために必要なことは、まず自分の長所を認め、自信をもつということですが、それと同じくらいに重要なことで忘れられがちなのが、自分の欠点をきちんと把握するということです。
「こういう長所があるから自分はすばらしい」という自信は、ともすれば他人を見くだす高慢さへと変貌してしまうものです。
「自分にはいろいろ欠点もあるが、それでも生きていく値打ちがある」と思えることが、本当の自信なのです。
また、そう思うことによって、他人の欠点にも寛容になり、他人を尊重できるようにもなるのです。

すべての人から尊重されたいと願うのなら、まず自分がすべての人を尊重しなければなりません。それは並大抵のことではないでしょう。
「すべての人を尊重することは、なかなかできることではない」ということに気づけば、「たまたま自分を尊重してくれない人がいたとしても、気にすることはない」という思いにいたるはずです。
「他人にどういう人間になってほしいか」ということでいくら悩んでも、きりがありません。自分が他人の人生を代わりに生きるわけではないのですから。
私たちが人生の大部分の時間をかけて悩むべきことは、「自分がどういう人間でありたいか」ということだけなのです。
(おわり)

ありがとう ロングセラー 46刷
こころのおそうじ。(だいわ文庫)
たかたまさひろ(著)
定価 770円(税込)

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メッセージ No.220-229
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