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たかたまさひろ(著)

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たかたまさひろ(著)

No.234『立場を入れ替えて考えてみる』

会社員のAさんは、同僚のBさんにいつもイライラさせられています。
Bさんは物覚えが悪く、なかなか仕事を覚えられないのです。
Aさんが3つの仕事をしている間に、Bさんはひとつの仕事しかできません。結局、Aさんがその尻拭いをするはめになるのです。

「もっと早くしてほしい」とAさんは注意するのですが、気の弱いBさんはもごもごと返事をするだけです。そのはっきりしない態度もAさんの神経をいら立たせます。
Aさんがあまりにも厳しく当たるので、Bさんは怖れて萎縮するようになり、よけいに仕事のミスも多くなってしまいました。
Aさんはほとほと疲れ果て、Bさんの顔を見るのも嫌になってしまいました。
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Aさんは、「仕事ができるか、できないか」だけで人間を評価し、「仕事のできる自分が、できない人間に足を引っ張られている」といら立っています。
「Bさんのせいで損をさせられている」と思っているのです。
しかし、本当にそうでしょうか。

よいか悪いかは別として、世の中は、頭がよく要領のよい人間がお金を儲けられるシステムになっています。
あくまで損得だけで考えるなら、自分以外の人間が要領が悪いということは、よろこぶべきことなのです。そのおかげで、自分はより多くのお金を稼ぐことができるのですから。
要領の悪い人たちに対して腹を立てる必要などありません。逆に、「私は、あなたたちの分まで儲けさせてもらっています。ありがとう」と感謝をしてもいいくらいなのです。

Aさんが、それほど頭がよいのなら、Bさんのような要領の悪い人がいる会社など辞めて、もっと頭のいい人だけが入れる会社に移るか、自分で起業をして、バリバリお金を稼げばよいのです。いえ、それができるなら、文句を言う前にとっくにそうしているでしょう。
実際、自分は仕事ができると思っているのはAさんの勝手な思い上がりで、第三者から見れば大して差はないということです。
他人を見くだすこと自体が、自分も同じ次元で競い合っているということを自ら証明していることになるのです。

人は皆、最大限とまではいかなくても、そこそこ精一杯の努力をしているものです。不器用な人は不器用なりに、鈍い人も鈍いなりに、何とかしようとがんばっているのです。
自分より能力の足りない人をいくら非難しても、自分が成長するわけではありません。
私たち皆が幸せに暮らすためにすべきことは、能力のある人もない人も、どうすれば互いに気持ちよくやっていけるかを考えるということです。

こう仮定してみてはどうでしょうか。
数年に一度、突然、自分と他人の身体が入れ替わるという現象が起こるとします。入れ替わった後は、その人の人生を生きなければならないのです。
どこの誰と入れ替わるか、いつ入れ替わるかは判りません。

社長になるかもしれないし、失業者になるかもしれません。明るく社交的な人になるかもしれませんし、不器用で内向的な人になるかもしれません。
それは明日起こるか、数年後になるか、あるいは一生起こらないか、まったく判らないのです。
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ある人を恨み、復讐しようと思っていても、復讐した直後に自分と相手が入れ替わるかもしれません。
仕事ができないとバカにしている相手、学校でいじめている相手……。いつ自分がその相手の立場に立たされるか判らないのです。

悩みや苦しみの中にいる人は、「なぜ自分だけがこんな目にあわなければならないんだ」と、自分のことで頭がいっぱいになっています。
「私の不満を判ってほしい」という怒りを他人にぶつけても、うっとうしがられるだけで、よけいにうっ憤は募ってしまいます。
そこから抜け出すためのきっかけとして、自分の気持ちを判ってほしいと思っているのと同じくらいに、他人の立場を理解しようと努めてみてください。

他人に腹が立ったり、他人を見くだしたりしてしまったときは、こう考えてみましょう。
「もし自分があの人として生まれていたら」
相手と同じ境遇に生まれ、同じ人生を歩んでいたなら、自分も同じような人間になっていたに違いありません。
自分という人間に生まれてきたことは、ルーレットの目のように偶然の結果にすぎないのです。
自分と他人との垣根をとり払い、どこを突ついても自分が痛いと感じられることが、人間に求められるもっとも重要な能力です。

そう考えれば、仕事の要領が悪い人がいたなら、ただ非難するだけではなく、「どうすればうまくできるようになるか」を一緒に考えようという気になります。
困っている人を見たなら、「自分とは関係ないから」と放っておくことはできず、手を差し伸べずにはいられなくなります。
愚痴や悪口ばかり言っているために嫌われている人を見たなら、「よほどつらい人生を送ってきたのだろう」と同情する余裕が生まれます。

中には、本当に怠惰で無責任で卑怯な人もいます。
しかし、そういう人も、好きこのんでそのような不幸な人間に生まれてきたわけではありません。
そういう人のことを劣る人間であると見くだすのであればなおさら、優れた人間に生まれた者の責任として「どうすればこの人は幸せになれるだろうか」と考えてあげねばなりません。
そして何より、そう考えることの最大の効用は、他人への不満が消え去り、自分の心が穏やかになるということです。
(おわり)

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リラックスブック(だいわ文庫)
たかたまさひろ(著)
定価 770円(税込)

人づきあいが苦手、小さなことですぐムカッとしてしまう、自信がない、そんなあなたの心を軽くする本
こころのお掃除、始めましょ
メッセージ No.230-239
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