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No.245『現実を受け入れて、前に進む』

会社員のA子さんは、同じ課の女性の先輩との付き合いについて悩んでいます。
その先輩と一緒に昼食をとったり、退社後に行動をともにしたりすることが多いのですが、彼女の口から出ることと言えば、仕事や家族に対する文句ばかり。いつもその愚痴の聞き役に回っているA子さんは、いい加減うんざりしているのです。
しかし、A子さんは引っ込み思案で、会社でほかに親しくしている人はいません。完全に孤立してしまうのが怖くて、この先輩との付き合いを断れないのです。

さて、A子さんの悩みの根本的な原因は、愚痴ばかり言う先輩がいることでも、職場にほかに親しい人がいないことでもありません。
A子さん自身が、体面を気にして、その現実を受け入れようとしていないことが問題なのです。
A子さんは、その先輩が相手にしてくれなければ、職場でひとりぼっちになってしまうのではないかと怖れています。しかし、現実にはその先輩との付き合いをまったく楽しんでいないのですから、A子さんの心の中では、すでにひとりぼっちなのです。
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A子さんは、「自分の心が孤独を感じること」よりも、「まわりから孤独な人間だと思われること」を怖れているのでしょう。
しかし、まわりの目を気にするのであれば、結局、いくらその先輩とのおざなりな関係にすがりついても、「あんな愚痴ばかり言う人としか付き合ってもらえないのか」と思われるのが関の山です。

親しい人がいないということが悪いのではありません。それを恥ずかしいことだと思い、ごまかそうとしていることがいけないのです。
人それぞれ、どうしても相性が合う人、合わない人がいます。職場の人すべてと馬が合わないのであれば、それは仕方がありません。
職場の同僚は、仲よくするために集まっているわけではなく、仕事をするための集団なのですから、仕事をきっちりこなし、人間としての礼儀をわきまえて接してさえいれば、問題はないのです。

A子さんが嫌々ながら先輩と付き合っているのは、ひとりぼっちになりたくないからではなく、「すでにひとりぼっちである」という事実を認めたくないからなのです。
しかし、「孤独に生きる」という覚悟を決めるほうが、「孤独である上に、他人に振り回されながら生きる」よりもよっぽどましです。まず、その現実を受け入れなくてはなりません。

現実を受け入れることを拒み、「その現実が変わってくれたらいいのに」と願っているばかりでは、そこから一歩も進めません。
「他人に認めてもらわなければ、自分は価値がない」のだとすれば、自分で自分の価値をおとしめていることになります。自分で自分を大切にしていないのに、他人がそれ以上に大切にしてくれるはずもありません。
まず現実をいさぎよく受け入れ、「では、自分はどうしたいのか」をはっきり決めることでしか、道は開けないのです。
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つねに友人たちとメールの交換をしていなければ不安で仕方がない、という人は、「いつも誰かとつながっている」ということを確認したいのではなく、「本当は心の底ではつながっていない」という、うすうす気づいている現実を認めるのが怖くて、先延ばしにしているだけなのではないでしょうか。
「こうなったらどうしよう」という不安に怯えているとき、その不安そのものが、もっと重大なものをごまかしているのではないかと疑ってみてください。

現実を受け入れるためには、「人間は何でも判り合えるのが当然である」という幻想を捨てなくてはなりません。
「他人と判り合えない部分がある」という現実に気づいたとしても、驚くことも悲しむこともありません。それが当然なのです。
家族でも、恋人同士でも、判り合えない部分はあります。
もちろん、他人から理解されないよりは、理解されたほうがよいに決まっていますが、それは何よりも優先させるべきことではないのです。

「理解されて当然」だと考えてしまうと、「自分を判ってくれるか、どうか」というせまい価値基準だけで他人を判断するようになり、A子さんの例のように、形ばかりの「つながり」を取りつくろうことに精一杯で、心の中では虚しさを感じている、という状態にもなりかねません。そして結局、「判ってくれない人」を敵視するようになってしまうのです。

「判り合えないのが当然」という前提に立ち、相手の異なる考えも尊重して、その中でひとつでも、ふたつでも、理解し合い、共感し合えるものを見いだしていくことに、人付き合いの意義、よろこびがあります。
むしろ、「判り合えなくても、付き合う価値がある」と思える関係こそ、馴れ合いやもたれ合いではなく、心の深い部分でつながり合うことができるのです。
(おわり)

ありがとう ロングセラー 46刷
こころのおそうじ。(だいわ文庫)
たかたまさひろ(著)
定価 770円(税込)

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メッセージ No.240-249
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