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たかたまさひろ(著)

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No.299『なぜ悪いほうに考えてしまうのか』

悪気はないと判っているのに、他人の何気ない言動に深く傷ついてしまう。
嫌なことがあると、何もかも自分が悪いのだと責めてしまう。
幸せそうな人を見ると嫉妬し、つい「不幸になればいいのに」と思ってしまう。
他人に文句を言いはじめると、止まらなくなり、よけいなことまで言ってしまう。
好きな人の前に出ると、相手の気を引こうとして、わざと不機嫌な態度をとったり、無視したりしてしまう。

上に挙げたような点に思い当たる方も多いのではないでしょうか。
そんなつもりはないのに、なぜか悪いほうに考えてしまう。いけないことだと判っているのに、自分の心が言うことをきかない。
心とは不思議なものです。自分のものであるのに、なかなか自分の自由にはなりません。
誰でも幸せになりたいと願っているはずなのに、わざわざ自分を不幸に追い込むような真似をしてしまうのです。
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必死になって嫌な考えを頭の中から追い払おうとすると、かえって嫌な考えに頭を支配されてしまうことがあります。
「自分の心が制御できない」と思ったときは、無理をしてはいけません。いったん「別にそれでもいいじゃないか」と開き直ってしまうのが解決の早道です。
そして、嫌な考えを追い払おうとするのではなく、逆に「自分から積極的にそう考えてみる」のです。
「押してもだめなら引いてみな」というわけです。

落ち込んだときは、無理に立ち直ろうとせず、「よし、これから自分の意志で落ち込んでやるぞ」と心に決めてみてください。
怒りがおさまらないときは、「よし、これから腹を立てるぞ」と自分に言い聞かせてみてください。
人前で緊張したときは、「よし、これから緊張するぞ」。
自分を責めてしまうときは、「よし、これから自分を責めるぞ」。
つまらないことに執着してしまったときは、「よし、これから執着するぞ」。

自分の感情を制御するためには、まずその手綱をしっかり握らなくてはなりません。
馬に乗っていない人が、暴れ出した馬を止めることはできません。馬に乗って、馬を走らせることができる人が、馬を止めることもできるのです。

「意思に反して、なぜか悪いほうに考えてしまう」というとき、まずすべきことは、その考えを打ち消そうとすることではなく、「そう考えているのは、紛れもなく自分自身である」とはっきり認めることです。

人は、他人に傷つけられたり、劣等感を感じたりして、嫌な感情に支配されたとき、それを拒絶しようとして、「なかったこと」にしようとします。自分の心の奥に閉じこめることによって、それを制御する権利も手放してしまうのです。
悪い感情をもつことは、とても不快なことです。あまりにも不快なので、「これは自分の責任ではない」と思い込もうとするのです。
しかし、手綱を手放してしまったために、「他人に自分の心を操られている」というさらにひどい不快感、屈辱感に苦しめられることになるのです。
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嫌な感情に苦しめられたときは、「この感情は自分のものである」「自分の意志でそう考えたのだ」とはっきり自覚してください。
自分の意志であると自覚したなら、それはたちまち自分の責任となります。もはや逃げ道はありません。
はじめは、とても不快で苦しいことかもしれません。しかし、そのつらさをも受け入れることによって、自分の心を自分のものにできるのです。

「嫉妬なんかしたくないのに、つい嫉妬してしまう」という人でも、「よし、これから他人を妬むぞ」と心に決めれば、逆にバカバカしくて妬む気は起きないものです。
「ささいなことを気に病んで、ついふさぎ込んでしまう」という人でも、「よし、徹底的にふさぎ込むぞ」と思い込もうとすれば、「あれ、ふさぎ込むってどういうことだろう?」と、もはやふさぎ込んでいた自分の感情を忘れているかもしれません。
やがて、「そんなことにエネルギーを使うのはもったいない」と思えるようになるのです。
(おわり)

ありがとう ロングセラー 46刷
こころのおそうじ。(だいわ文庫)
たかたまさひろ(著)
定価 770円(税込)

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メッセージ No.290-299
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