No.303『人目を気にせず、堂々と生きたい』
人は誰でも、他人の目を気にするものです。
「他人に見られている」という意識が、心に張りをもたせ、やる気を起こさせます。
他人の目があるから、「恥ずかしいことはやめよう」「嫌われるようなことはやめよう」と自分を律することができるのです。
人目を気にすることは、悪いことではありません。
しかし、「他人とまったく目を合わせられない」「人前に出ると、何もしゃべれなくなる」というほどまでに他人を怖れすぎては、社会生活にいろいろ支障をきたしてしまいます。
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「他人の目を気にせず、自然に振る舞いたい」と思えば思うほど、肩に力が入り、ますます他人の目が気になって、態度がぎこちなくなってしまいます。
人目を気にしすぎることに悩んでいる人は、「他人の目を無視しよう」などとは思わなくてよいのです。
世の中には、「もっと人目を気にすればよいのに」と思うほど、厚顔無恥、傍若無人な人たちがいます。
そのような恥知らずな人間に成り下がってはいけません。
他人の目は、充分に意識すべきなのです。
人前で極度に上がってしまう人は、自分に自信がなさそうに見えて、実はあまりにも自意識が強すぎるのです。
「立派な人間だと思われたい」「格好いいところを見せよう」と思うから、かえって失敗してしまうのです。
会社の仕事で、何人かの顧客を前にして自社の商品の説明をしなければならないとき。
話を聞いている側の人たちは、商品に関する情報を知りたいだけで、「話している人がどういう人間か」ということには、たいして興味をもっていません。
それなのに、こちらがあまりにも緊張して、何度も言葉につまってしまっては、かえって「自分という人間」に他人の目が集中してしまいます。
相手の立場になってみれば、「なぜそんなに緊張するのですか。あなたが気にするほど、私はあなたのことを気にかけてもいませんよ」と思うことでしょう。
「注目されるのが恥ずかしい」と思えば思うほど、注目を集めてしまいます。
「変に思われたくない」と緊張すればするほど、他人の目には変に映るのです。
(念のために申し添えますが、「口べたであること」や「気が弱いこと」がいけないというのではありません。そんな自分に劣等感をもち、虚勢を張ってごまかそうとすることがいけないのです)
人目を気にしすぎるあまり萎縮してしまう人は、正確に言えば、「他人の目を気にしている」のではなく、「他人に見られている自分を意識しすぎている」のです。
どうしても人目を気にしてしまうならば、いっそのこと、完全に他人に成りきって、他人の目から自分を客観的に眺めてみればよいのです。
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人前で緊張して何も話せなくなってしまったときは、いったん「自分」から離れて(幽体離脱でもした気分になって)、「他人の目」で自分を見つめてみてください。
「自分がどう思われるか」ではなく、「他人がどう思うか」だけを考えるのです。
「この人、変わった人だな。そんなに怯えることないのに」
そう考えて笑い飛ばすだけでよいのです。その後、「自分が変に思われた」ということまで考えてはいけません。
「人目を気にするまい」と思えば思うほど、ますます「本当は変に思われているのではないか」と勘ぐってしまい、他人の心が判らなくなってしまいます。
逆に、もっと積極的に「他人がどう思うか」を考えるべきなのです。
本気で他人の立場になって考えれば、自分を冷静に見つめ直すことができるのです。
人はどうしても、他人事ならば何とも思わないのに、自分のことだと何十倍にも重大に考えてしまいがちです。
他人を怖れている人は、そんな自分の臆病さを他人に悟られないように、必死に隠そうとしているのかもしれませんが、他人にとっては、そんなことはどうでもいいことなのです。
ふつうの人は、他人が「何を楽しんでいるか」「何に生きがいをもっているか」ということに興味はあっても、「何を怖れているか」などということはほとんど気にしていません。
完全に他人の目になって自分を見れば、自分ひとりで勝手に他人を怖れていることが、バカバカしく思えるようになるでしょう。
自分を捨て去ってこそ、自分を自在に生かすことができます。
「自分を捨て去る」とは、けっして自分の価値を否定するという意味ではありません。
「他人の立場になって考える」ということは、自分に自信をもつためにとても重要なことなのです。
おでこについた汚れは、鏡を使わなければ見ることができません。
他人の立場になって自分を見ることは、とりもなおさず自分自身としっかり向き合うことになるのです。
他人のために何かをしてあげるときも、「どうすれば他人がよろこんでくれるか」ということだけを考え、他人のよろこびをそのまま自分のよろこびとして感じることができれば、よろこびは何倍にも増えるでしょう。
「他人の目で自分を見る」ということを心がけていれば、堂々と他人と接することができるようになり、他人から認められ、やがて自信も生まれてくるのです。
(おわり)