No.052『本当の謙虚さをもつ』
自分に自信のある人ほど、謙虚になれるものです。
しかし、この「謙虚」を、単なる臆病と勘違いしてはいけません。本当の謙虚さの裏には、他人を思いやる気持ちが必要です。
単に、他人から否定されるのが怖いから、自ら先回りして「どうせ自分なんか」と自分を卑下する人は、謙虚でも何でもありません。むしろ、ごう慢であるとさえ言えます。
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ことさらに「どうせ自分なんか価値がない」と強調する人は、他人から「そんなことはないよ」と否定してほしいと思っているのです。無意識のうちに、他人の心を操作して、自分を認めてくれるように仕向けようとしているのです。
謙虚な人は、つねに自分を省みて、少しでも自分を改善しようと前向きに考え、行動しています。
対して、臆病な人は、いつも「自分が悪い」と言っているのですが、それは単に、他人から攻撃されないための防御にすぎないのです。
臆病な人は、自分を守ることばかり考えています。心の奥では、「悪いのは他人だ」と思っているのですが、はっきり言えない自分がふがいないから、巧妙に隠しているだけなのです。
ある男性は、仕事の失敗で多額の借金をかかえてしまいました。しかし、妻と小学生の子供には、「心配をかけたくないから」という理由で隠し続けていました。
どんなにがんばっても返済できる額ではなく、男性はついに、窮して自ら命を絶ってしまいました。
それを知った妻は、「私は妻として、何の役にも立てなかった。私が夫の悩みに気づいてあげられれば、救うことができたかもしれないのに」と、自分を責めました。
夫が借金のことを妻に隠していたのは、妻を気遣う優しさでも何でもなく、ただ「自分の価値を否定されるのが怖かったから」にすぎません。結果として、妻をおおいに傷つけ、苦しめることになってしまったのです。
妻にとってみれば、正直に借金のことを打ち明けてもらい、「一緒にがんばってほしい」と言われたほうが、どれだけ気が楽だったことでしょう。
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言いたいこともはっきり言えず、いつもビクビクしている人は、優しいわけではなく、単に臆病なだけなのです。
他人を怖れている人は、他人に拒絶され、嫌われることを怖れています。
しかし、実はそういう「他人を怖れる態度」こそが嫌われるもっとも大きな原因なのです。
「どうせ他人は、自分の弱点を非難し、攻撃するに決まっている」と、他人を敵視し、自分を守ることばかり考えている人を、誰が好きになれるでしょうか。
自分をさらけ出す人より、自分を隠す人のほうが、はるかに嫌われる可能性が高いのです。
泳ぐのが下手な人は、やみくもに手足を動かして、体力を消耗し、溺れてしまいます。水を怖れてもがくのではなく、ふっと力を抜いてみれば、体は自然に浮くものです。
根拠のない怖れ、不安を捨て去ってみてください。
「他人は、自分の欠点もふくめて、すべてを受け入れてくれるのだ」と自分に言い聞かせてください。それは、「他人を信じる」ということであり、本当の「謙虚」なのです。
他人を怖れていたときよりも、あなたは確実に他人に受け入れてもらえるはずです。
人間の感情は、そのまま反射して返ってきます。他人に敵意を抱けば他人からも敵意をもたれ、他人を尊重すれば他人からも尊重されるものです。
(おわり)