No.266『会話は、具体的に』
他人と話をするのが苦手な人にとって、もっとも大きな悩みは、「会話が続かない」ということではないでしょうか。
朝、学校で友人に会って、「おはよう」とあいさつはするが、ほかに話すことがない。
世話になった人に会って、「この間はありがとうございました」「こちらこそ」と言葉を交わしただけで終わってしまう。
つまり、「二言目」が続かないのです。
知っている人に会ったとき、あいさつさえもしないのは問題外ですが、ただあいさつだけで終わらせるのは、何とも物足りない感じです。
さらにうち解け合うための重要なポイントは、あいさつに続く「二言目」の会話です。
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二言目がとっさに浮かばないときは、「話題を細かく、具体的な方向にもっていく」というふうに考えてください。
「おはよう」「こんにちは」というあいさつの言葉は、誰に対しても同じように発するものです。相手がAさんでなくても、BさんでもCさんでも変わりはありません。
そういう一般的な言葉だけではなく、「相手がAさんでなければならないような話題」を見つけるのです。
「風邪は治りましたか」
「最近、釣りには行きましたか」
「お子さんはお元気ですか」
「お友達の結婚式はどうでしたか」
「部長がAさんを褒めてましたよ」
ある人のことを「知っている」とは、その人の仕事なり、趣味なり、交友関係なり、「ほかの人とは違う、何か特有のこと」を知っているということです。
「自分は相手の何を知っているのか」と考えれば、話題は見つかるでしょう。
会話に詰まったときは、とにかく「具体的に」進めていけばよいのです。
好きな女性に会って、「そのバッグ、いいですね」とただ褒めるよりも、「どこで買ったんですか」という言葉を付け加えれば、「ああ、あの辺りには私もよく行きます」「休みの日は、よく買い物に行くんですか」「外を出歩くのが好きなほうですか」といくらでも話を広げることができます。
「いいですね」と一般的な言葉で褒めるだけでは、社交辞令でのお世辞だと受けとられかねません。
「そのバッグ、どこで買ったんですか」と具体的な訊き方をしたほうが、押しつけがましくなく、相手への関心を示すことができます。
誰でも、自分に関心をもたれることは、うれしいものです。そこから自然に会話が生まれることでしょう。
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また、自分が他人から質問されたとき、調子に乗って自分のことばかり話さず、相手にも同じ質問を返すことを忘れないでください。
他人から何か訊かれたときは、相手も自分のことを話したがっていると思ったほうがよいでしょう。
「映画はよく観ますか」と訊いてくる人がいれば、その人自身もきっと映画が好きなのです。
少し自分のことを話した後、「あなたはどうですか?」と訊き返してあげてください。
自分が映画に興味がないときも、「いえ、観ません」と答えるだけでは、味も素っ気もありません。
「あなたはどうですか?」と訊き返すことで、会話はつなげることができるのです。
そして、他人の話を聞くとき。
「はい」とか「ふうん」と相づちを打つだけでは、相手はおもしろくありません。
「そうそう、その気持ち、よく判る」「へえ、おもしろいね」など、相づちの後に二言目を添えるだけでも、ずいぶん印象は違います。
「最近、ガーデニングに凝っているんですよ」と言われれば、「ガーデニングですか」と、相手の言葉を繰り返すだけでもよいのです。
相手は、「私の話をよく聞いてくれている」と思って、もっと話したいという気になります。
会話は、二言目をうまくつなげることができれば、自然に弾んでいくものです。
あいさつだけで終わらせないこと。イエスかノーの返事だけで終わらせないこと。
その鍵は、「具体的に」ということです。
「この漫画がおもしろかった」というだけではなく、「どうおもしろかったのか」。
「仕事が忙しくて疲れた」というだけでなく、「どのように忙しかったのか」。
自分のことも、相手のことも、「なぜ」「いつ」「誰と」「どのように」と細かくくだいていけば、会話を続けるのに苦労はしないでしょう。
(おわり)