No.074『欲望をコントロールする』
人間の欲望には果てがありません。
給料が20万円の人は、「せめて25万円あれば」と思いますが、現実に25万円の給料が得られるようになれば、今度は「30万円くらいはほしい」となってしまいます。
病気で入院したときは、「健康が一番だ」と思いますが、病気が治って元気になり、日常生活に慣れたころには、またささいなことに不満が募ります。
今、あなたが何かに対して不満を抱いているとして、たとえその不満が解消されたとしても、さらに高い欲望を訴え、新たな不満を感じてしまうことでしょう。
欲望から要求が生まれ、要求から不満が生まれます。欲望に果てがない以上、不満にもかぎりがありません。
現在に不満を抱いている人は、結局、どのような人生を送ろうとも、一生不満を抱くことになるでしょう。時間とともに不満の種類が変わるというだけのことです。
根本的に不満を解消する方法は、「欲望を抑えること」しかないのです。
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と言っても、修行僧にでもなるというのでなければ、俗世で生きる私たちにとって、完全に欲望を断ち切るというのは、不可能に近いことです。
適度な欲望は、向上心には欠かせないもので、悪いことではありません。まったく欲がないのは、「無気力」と同じです。
大きすぎず、小さすぎず、適度な欲望をもつということが、心豊かに暮らすための秘訣です。
人間にはさまざまな欲望がありますが、もっとも人間を苦しめるのが、「愛されたいという欲望」です。
もちろん、誰でも、他人から愛されれば嬉しいものです。愛情を受けるということは、生きることの張り合い、支えとなることで、とても大切なものです。
しかし、それは結果的に感謝すべきもので、当然のように要求するものではありません。
せっかく人間に喜びを与えてくれるはずの愛というものが、要求してしまった途端、人間を絶望させるほどの苦しみに変わります。
愛を要求する人は、他人に拒絶されるか、その弱みにつけ込もうとする心ない人に利用されるか、どちらにしても、不幸な結果しか招きません。
欲望に苦しめられたときは、「人間の欲望には果てがない」という真理をよく思い出してください。
愛を要求する人は、えてして、他人に感謝する気持ちを忘れてしまいがちです。
仮に願いが叶ったとしても、それを当然のこととして、さらに強い要求をして、またぞろ不満を抱いてしまいます。まったくきりがないのです。
他人から愛されている人は、けっして愛を要求したから得られたのではありません。むしろ、要求しないからこそ、他人から「積極的に」愛してもらえるのです。
強引に愛を要求し、望み通りの愛が得られることなど、人間が空を飛ぶのと同じくらいに不可能なことです。あなただけではなく、この世の誰にも不可能なことです。できないことを望むから、苦しいのです。
まず、「他人を愛すること」そのものに喜びが感じられなければ、いくら他人に愛情を要求しても、永久に心が満たされることはありません。
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仕事でも、「上司に嫌なことを言われた」「同僚は自分よりも楽をしている」などと愚痴ばかりこぼしている人は、仕事そのものにやりがいを感じておらず、「いやいやながらやっている」という意識の強い人です。
次々に不満が生まれるのは、まわりのせいではなく、自分に意欲がないからです。
「自分がお金を稼ぐために、自分の意志で働いているのだ」ということを忘れてはいけません。
積極的な意志をもって行動している人は、他人の態度などいちいち気にかけないものです。
あなたが通りを歩いていて、財布を落とし、通りかかった人に拾ってもらったとします。
さりげなく「落としましたよ」と言って渡されれば、素直に感謝できるでしょうが、「さあ、礼を言え!」と強要されたら、口だけでは「ありがとう」と言っても、心から感謝することはできないでしょう。
同じように、「私を愛してくれ」と他人に強要して、無理やり「愛している」と言わせたとしても、けっして心から愛されることはありません。
愛されたいと願うなら、まず他人の立場になって、相手のそういう気持ちを想像することからはじめなければなりません。
「愛されたい」と願うこと自体は、人間として当然のことで、卑しいことではありません。しかし、その欲望をむき出しにしてしまう人は、他人から敬遠されてしまいます。
お金がほしいからといって、強盗をして他人から奪えばいいというものではありません。知恵をしぼって、合法的にお金を儲ける方法を考え、努力する必要があります。
愛情も、短絡的に直接要求するのではなく、時間はかかっても、正当な手段で得る方法を考えなくてはなりません。そういう態度こそが、その人の魅力であり、向上心であり、人間性なのです。
他人から愛されるためには、まず「自分が幸せに生きること」が必要です。自分が幸せになれば、自然に他人も幸せにしてあげたいと願うようになるはずです。
他人の幸せが、また自分にも返ってくるのです。
欲望を感じつつも、その欲望だけがひとり歩きしないよう、うまくコントロールし、有効に活用できる人が、幸せな人だといえるでしょう。
(おわり)