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たかたまさひろ(著)

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No.251『相手を見て判断するということ』

ある大学生の男性は、学校に歩いていく途中、曲がり角で中年の女性と肩がぶつかってしまいました。
彼が謝ろうとすると、女性は、「ちょっと、あぶないじゃないのよ!」と吐き捨てるように言って、ぷいと去っていきました。
彼は一瞬あっけにとられたのですが、その後、怒りがふつふつとわき上がってきました。
こちらが謝ろうとしたのに、あの言い草は何だ! 不注意だったのはお互いさまじゃないか……。

彼は、授業中もその件が忘れられず、イライラして、勉強に集中できません。
あのとき、とっさに言い返してやればよかった。もし今度同じような目にあったら、何と言ってやろう。
そう思うとともに、そんなささいなことでいら立っている自分の心のせまさにも腹が立っているのです。
その女性の言い方が悪かったことは言うまでもありませんが、ここでは、彼の心のもち方について考えてみます。
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彼は細身で、気が弱く、よくまわりの人から「いつも何かに怯えているようだ」と言われます。
彼は、その女性にもまた「弱そうな人間」だとみなされたことが悔しいのです。
あの女性も、もしぶつかった相手がプロレスラーのような大男だったら、文句を言わなかったのではないか。彼女は自分を見て、「こいつは弱そうだ。やり返してこないだろう」と見くびり、あんな言い方をしてきたのだろう。
そう思うと、人を見て判断した彼女の差別的な扱いに我慢がならないのです。

しかし、考えてみれば、それは彼にとっても同じことなのです。
彼が「言い返してやりたい」と腹が立つのは、言い返そうと思えばできる相手だからです。
もし文句を言われた相手が、やくざ風の怖そうな男だったら、どうでしょうか。
恐怖は感じるかもしれませんが、「なぜ言い返さなかったんだろう」と後々まで悔やみはしないはずです。

相手の間違いを正したいというなら、どんな相手に対しても同じように立ち向かえなければなりません。
自分より弱そうな相手に対してだけ言い返すというのでは、やはり彼も、彼女のずるさを責められないのです。
人は誰も、よいか悪いかは別として、相手を見て判断しているのです。

同じことを言われても、誰に言われたかによって、受け止めかたはずいぶん違ってきます。
尊敬する人、好きな人に言われたことなら、よっぽどひどいことや理不尽なことでないかぎり、素直に受け入れられるものです。
腹が立つのは、たいてい、「あんな奴に言われたくない」と思うときだけです。
「バカにされて悔しい」という思いは、まず自分が相手を見くだしていることに端を発しているのです。

「なぜあの人は、私をバカにするのか」と思ったときは、こう自分に問いかけるだけで充分です。
「私があの人を見くだしている気持ちと同じではないか」
悔しさはぬぐえなくても、少なくとも相手の気持ちを理解することはできます。
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感情は、鏡のように反射し合うものです。「どちらが悪いか」と理屈で解決しようとしても、なかなかうまくいきません。
相手から見くだされることが許せないと思ったときは、自分も相手を見くだしています。嫌われることが許せないのは、自分が相手を嫌っているからです。
言われたこと、されたこと、事実そのものよりも、「その人」に言われた、されたことが許せないのです。
他人とのいがみ合い、感情のもつれ合いとは、その程度のあいまいでいい加減なものなのです。

悪い感情が反射し合うのと同じように、よい感情も反射し合います。
他人の態度に腹が立って仕方がないときは、こう考え直してみましょう。
「もし好きな人に同じことをされても、腹が立つだろうか」
身近にいる好きな人でも、好きな芸能人でもよいのです。頭に思い浮かべてみてください。

好きな人から言われたこと、されたことなら、「たまたま虫の居所が悪かったのかな」と思うくらいで、たいていのことは許せてしまうのではないでしょうか。
また、不満を訴えるにしても、なるべく相手を傷つけないような優しい言い方をするのではないでしょうか。
気に食わない人に嫌なことを言われたときは、心の中で、相手の顔に好きな人のお面を重ね合わせてみましょう。
「もし私が相手のことを好きだと仮定したら」
そう考えるだけで、たいていのささいな怒りは、すぐにおさまることでしょう。
(おわり)

ありがとう ロングセラー 46刷
こころのおそうじ。(だいわ文庫)
たかたまさひろ(著)
定価 770円(税込)

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メッセージ No.250-259
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